モドル  イッコモドル

《仏教系書籍》

私は宗教に対する信仰は無い。
しかし、思想としての宗教には大変興味がある。
仏教大学を受けようかと思ったくらいだ。
奥深いその世界は歴史は長く変化は早い。
何が本当か正しいか、その姿は巨大すぎて誰にもわからない。
宇宙的に限りなく増大し膨張していく思想。
だからこそ惹き付けられてやまない世界。


「『般若心経』を読む」/著者:紀野一義

    有名だが意外に意味のわからない般若心経についてわかりやすく説明している。
    その訳や由来など読み易い。西遊記の三蔵法師のモデルとなった玄奘の物語など感動的。
    般若心経のしめの言葉、
    「掲帝 掲帝 般羅掲帝 般羅僧掲帝 菩提僧莎訶」
    (ギャテイ ギャテイ ハラギャテイ ハラソウギャテイ ボウジソワカ)
    というものを、
    「往ける者よ 往ける者よ 彼岸に往ける者よ 彼岸に全く往ける者よ さとりよ 幸あれ」
    と日本語訳し、しばし呆然とその意味を考えさせる。「般若」とは要するに「智慧」のこと。
    仏教の原点ともなるヒンドゥーの思想を解説し、菩薩とは何かに言及する。
    「永遠なるものを求めて 永遠に努力する者を 菩薩という」
    宮沢賢治の詩や、映画、ギリシア哲学などを引用して、広い視野で意味を考えていく。
    そして、中心部では仏教の核とも言える「空」の思想について、実にわかりやすく説く。
    「色即是空」の「空」。空っぽの「空」。空しい「空」。虚空の「空」。
    逆に「無明」(明かりが無くて暗いこと)をからめて「空」を表す。
    人間の仏性とは何なのか、般若心経はその短い漢字の羅列のなかですべてを語っている。



「禅がわかる本」/著者:ひろさちや

    禅って難し。「これは何か」と聞かれたら、( ^-^)_旦~「お茶です」と答えて叩かれる。
    当たり前のことは、そのまんまでなくありのままの姿を捉えるべし。
    ふうむ。わからん。でも、「湯に葉を煎じたものです」と答えれば、「それが茶だ」と
    叩かれる。茶を認識し、理解し、それを忘れて茶に戻る。それが禅。
    この本は難解な禅問答を、噛み砕いて笑いをまじらせて書いてある。
    かなり、面白い。これ一冊で禅がわかる、と言えばわかるかも。
    禅問答とは、「公案」という昔ながらの問題があって、それに答えて悟りを得る、というもの。
    答えに正解は無く、個々人によって場合によって時によって違ってくる。
    例えば、「麻三斤」という公案。ある僧が偉い禅師に聞く。「仏とは何か?」
    禅師は言う「麻が三斤くらいじゃない?」
    さあ、どういう意味でしょう?
    禅師いわく、「莫妄想!」(考えるな!)
    では、どうしたらいいんだろ?というような話が満載。ただの雑学本としても面白く読める。



「禅とは何か-それは達磨から始まった-」/著者:水上勉

    禅の歴史を史上有名な禅師を追いながら網羅する。これ一冊で今日から禅通。
    「飢餓海峡」の作家、水上勉大先生の著作。
    「達磨はなぜ東へ行ったか」という韓国映画があったが、達磨は南天竺、インドの王子様。
    壁観の婆羅門と言われる達磨。中国にやってきて「面壁九年」、壁に向かって九年間も
    座り続けたという。(風呂はいいとしても、食事やトイレはどうしてたのだ?素朴な疑問)
    日本のダルマさんは、この達磨禅師が座禅しすぎて足が腐ってしまったという姿。グロね。
    かの有名な一休さんや、沢庵さん、隠元さんといった日本の食べ物の語源となった禅師達の
    生涯と思想をたどる。
    続々と津波のごとく現れる奇人変人的な禅の求道者達の壮絶な生。
    仏教の歴史を人生を賭けて創った人々。莫妄想。読むべし。





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