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《他ヨーロッパ映画》

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
    2000/デンマーク/監督:ラース・フォン・トリアー/主演:ビョーク

    チェコからの移民のセルマ。アメリカの片田舎の工場で働いている。
    彼女は正に爪に火をともすように倹約して、息子のジーンに誕生日のプレゼントも
    あげられないほど。親友のキャシーにも内緒で大金を貯金しているのだ。
    それは、彼女の病気に原因があった。遺伝的に失明をする家系のセルマは、アメリカで
    お金を貯めて、ジーンに目の手術をうけさせようとしているのだ。ジーンが13歳になるまでに
    手術をうけさせなくてはならない。彼女の唯一の楽しみはミュージカルだった。
    ある日、セルマは警察官で家主のビルに、実は破産寸前であることを打ち明けられ、
    自分も秘密を言ってしまう。それは、つらいもの同士支えあっていこうというセルマの優しさだった。
    二人は、このことは絶対の沈黙の誓いをたてた。
    しかし、追い詰められたビルはセルマを裏切ることになる。

    カンヌグランプリ。公開当時、スゴイ話題作だったね。CMもキレイでした。
    でもまあ、「カンヌ」受けしそうな感じな作品。重いテーマを淡々と描く。
    カメラが手持ちなので、画面が揺れる揺れる。変なとこでアップにしたり、台詞によって
    首を振るカメラの回し方をするので、見てると気持ち悪くなってくる。
    しかし、主演のビョークはホントに子供のような無垢な目をしている。
    ヨーロッパ人特有の不思議な身振り、物腰。目で語る沈黙。
    歌を歌うとビー玉のように目がきらきらする。歌声もさすが。
    この役はわたしにしか出来ないと言って押しに押し捲ったそうだが、どうなんでしょう。
    まあ、セリーヌ・ディオンには出来ないよな。
    ツライ現実を離れて、セルマは空想の世界に入るとミュージカルシーンになる。どうなんでしょう。
    後半の刑務所に入ってからのほうが、人間味溢れてきて見ごたえあり。
    それまでは冗長で、ビョークが妖精のようで現実感が無く、身にせまる悲しみが感じられず。



「バグダット・カフェ」
    1987/西独/監督:パーシー・アドロン/主演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト

    アメリカの荒野に佇む潰れかけたモーテル、バグダット・カフェ。
    そこへ、謎のドイツ人女性ジャスミンが現れる。
    いつも何かに苛ついてる女主人のブレンダ、気弱な夫、心を閉ざした子供、
    奇妙な住人達。まるでテンポの合わないジャスミンを最初は警戒するが、
    次第にその暖かなペースに巻き込まれていく。
    経営不振のモーテルにお礼をしようと、ジャスミンは店でショウをやることにする。
    店は大盛況。家族の絆も戻り、バグダット・カフェに笑顔が溢れる。

    何より音楽がイイ。画が綺麗。色が鮮烈。
    ストーリーよりも大事なことがあるのが映画なんだ、と思える。
    アメリカ人達の疲れた荒んだ目と、ジャスミンの不思議に澄んだ目が対照的。
    しかし、マリアンネさんは、あんなに太ってて女優さん・・・なのね。
    いや、とても素敵ですが。


「灰とダイアモンド」
    1958/ポーランド/監督:アンジェイ・ワイダ/主演:ズビグニエフ・チブルスキ

    「世代」「地下水道」とのレジスタンス三部作。
    テロリストの青年が指令を受けて人を殺す。しかし、殺すものは殺される。
    表面に浮かび上がるストーリーは、ごく単純。
    しかし、その奥に隠されたメッセージは今の日本に生きるものにとっては
    重過ぎて理解しがたい。東欧などに見られる、この手の隠しメッセージ的映画は
    危なくてミステリアスで意味ありげで魅力的だ。
    何回も見るうちに、そのメッセージ性に気付き愕然としたりする。
    主人公の黒眼鏡。説明されない偶然性。有名なラストシーンは唖然とするほど
    あっさりと、汚らしく、惨めに終わる。そこに何が隠されてるのか。私にはわからない。
    本当の所はきっと一生わからない。もし、その時代のその地へ行けたとしても。
    だからこそ、人は映画を見る。


「コルチャック先生」
    1990/ポーランド・西独/監督:アンジェイ・ワイダ/主演:ボイチェフ・プショニャック

    ポーランドの伝説的ユダヤ人の実話をもとに映画化。
    世界初の小児科医で児童作家でラジオのパーソナリティもしていた
    コルチャック先生。人生のすべてを子供達のために捧げた人。
    しかし、戦争の影は迫り、大人も子供も容赦無く巻き込まれる。
    延々と続く意味のわからない映像。東欧の歴史を知らない者にとっては
    理解できない会話。ワイダ氏絶好調。
    でも、思想や状況がわからなくても確実に伝わるものがある。
    コルチャック先生は子供達を必死に守ろうとするが、ナチスドイツは迫り来る。
    ユダヤ人は次々と捕まり、収容所に送られる。やがてコルチャック先生と子供達も
    捕まり、強制収容所に向かう狭い貨物列車に何百人と詰め込まれて立って足をついていてるのがやっとだったという。
    事実は収容所に辿り着く前に、子供達の大半がその貨物車の中で死んでしまった。
    反対に映画では、敢えて幻想を描く。
    野原に着いて子供達は嬉しそうに貨物列車から走り出ていく。
    それを見守るコルチャック先生。列車に乗る前とは打って変わった笑顔。悲しい。    






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