《宮部みゆき》
1960年 東京うまれ
多作ミステリ作家。ポスト赤川次郎!?
意外にも時代物を結構書いている。ポスト山本周五郎!?
読みやすく、題材もわかりやすい。男主人公でも違和感がない。
さらりと読めて通勤電車の行き帰り向き。
そのぶん、印象に残らないものも多い。正に時間つぶし本。OLの友。
しかし、その中でもはっとするほど心に食い込む長編がある。
軽い気持ちで読んでいたのに気がつくと滂沱と涙が零れ落ちる。
満員電車では恥ずかしいぜ・・・。
「火車」
物語・・・・・・怪我でリハビリ中の刑事本間。妻を亡くし息子と二人暮し。
そこへ甥が消えた婚約者を捜して欲しいと頼みこんでくる。
渋々調べていくうちにカード破産をして
何もかも失った過去がある事実がわかる。
しかし、それは彼女の人生の一面に過ぎなかった。
本間は次第に彼女という存在に魅了され、本当の姿を追い求めていく。
ぴゃん・・・・・泣けるぜええええ。
まさにこれ、電車の中で泣いたよおおおお。
★ネタバレ有り
特に図書館のシーン。
借金取りから逃れるために、夫と図書館で父親の死亡記事を探す。
ふと顔を上げた夫が一言「まるで鬼女だ」
彼との幸せのために実の父が死んでいる証拠を探しているというのに、
その当の彼にそんなこと言われるなんて・・・。
ショックだわああああ
しかも、読んでいて、ちょうど同じこと思ってしまったんだもの・・・。
そして、彼女は決心するのだ。
このままじゃ、あたしは決して幸せになれない。
何とかしなくちゃ。
生き抜くために、幸せになるために。どうにかして何とかするんだ。
何が何でも、あたしは幸せになるんだ。
彼女は何度もどん底に落ちる。悲劇は数限りなく襲い掛かる。
でも彼女は絶望しない。巧緻を尽くして考え抜く。けして諦めない。
可憐で薄幸な女の、浅ましいまでの生への執着。
凄まじ過ぎる幸福への執念。他人を蹴落としても本能に従う強い意志。
その生きる姿は欲望とは裏腹に神々しいまでに美しい。
「蒲生邸事件」
物語・・・・・・大学受験のために上京した高校生。
宿泊先のホテルで陰気で奇妙な男を見掛け、何故か気になる。
しかし、試験はうまく行かず、おまけにホテルは火事になってしまう。
もう死ぬんだと思ったその時、陰気な男に助けられ、
彼は雪の中にほうり出された。
その世界は、226事件の起こったその日だった・・・。
ぴゃん・・・・・いわゆるタイムスリップもの。
なあんだ、下らない・・と思って読み進んでいくとハマる、ハマる。
主人公と一緒になって、昭和初めの時代に驚いたり、
馬鹿にしたり、感動したり出来る。
正に時を越えた恋をしたり、いきがっていたのに本当の恐怖を感じたり
生き方について初めて真剣に考えたりして成長する。
一夏ものみたいだけど(一冬?)、面白い。
しかし、この人は炎についての描写が実にうまい。
他作品にも「火」が出てくること多いし、
本当に目の前に炎が上がってるように感じられる。