「三国志」・・・・・・・昭和14年から昭和19年まで新聞連載された。
講談社吉川英治文庫で全8巻。
ストーリーを説明するのは、かなり難しい。長すぎる。
要するに「国盗り物語」だ。野望を持った若き男達が
広大な中国を舞台に領地を廻って、プライドを掛け、
人生を通じて闘い抜く。
その戦闘シーンは凄まじく、鍛えた馬に乗り何キロもの鎧をつけて
戟(鉄の鉾)を振り回し血飛沫を上げて殺しまくる。
策略をめぐらし、裏切り、あらゆる戦略を持って国を盗る。
主人公格の蜀の国の劉備玄徳は情に篤く、信を貫く男。
その人柄に惚れて義兄弟の契りを結ぶ関羽と張飛。
この三人だけは物語を通じて決して裏切らない。男の友情。
そして、後に玄徳につくかの有名な諸葛孔明。
やはり、この人が登場してからが面白い。こんな神のような頭脳を
持った人がホントにいたのか。
全編、戦争だらけだが男達の人間模様が克明で素晴らしい。
(女はエキストラ程度にしか出ない)
信条に従って闘い抜く、という時代があったんだな。
中でも趙雲という豪傑が玄徳の妻子を敵の中から救い出し、
総身血塗れになりながらも守り抜くくだりは圧巻。
※ぴゃんpapaに解説を書いてもらったモノです。↓
【「三国志」雑感】
中国の歴史小説を楽しく読むためには、まず登場人物の名前の読み方をしっかり把握することです。
中国の人名は、苗字、名前の他に字名(アザナ)があります。
例えば「三国志」主役の劉備玄徳の「劉」は苗字、「備」は名前、「玄徳」は字名です。
苗字も名前も一字、あるいは苗字は一字で名前は二字、逆に苗字は二字で名前は一字ということがあるからです。
諸葛孔明は「三国志」主役の一人ですが「諸葛」は苗字、名前は「亮」、「孔明」は字名です。
同時代に「公孫賛」という武将がいますが、どのように読むのでしょうか。
コウソン サンと読みます。コウ ソンサンではありません。
中国はものすごく広い国です。ヨーロッパの全部を合わせたよりも広いのです。
「三国志」の中で、「○○城の東より出陣して敵を撃退した」あるいは「○○川より○○丘へ進出して敵と退陣した」というような記述がでてきます。
本の巻頭や巻末には、この地図が掲載されておりますが、地名や位置関係が必ずしも明確ではありません。
ですから本の脇には中国の地図を置いて、文中の位置を確認しながら読むことをおすすめいたします。
さて、「三国志」のことです。晋の陳寿の撰による正史「三国志」と歴史小説である羅貫中の作「三国志演義」とがあります。両者は別物なのです。「三国志演義」は正史「三国志」をもとにしたフィクションの要素が多い読み物です。
後漢最後の献帝から帝位を禅譲された北方の魏、現在の四川省を占める蜀、南方の呉の三国が天下を争った物語です。
魏の曹操は山東地方の反乱制圧に成功し、一大軍閥となります。
蜀の劉備は前漢の景帝の後裔といわれ関羽、張飛とともに「桃園の結義」で義兄弟となり、黄巾の乱を平定します。
呉の孫権は建国早々ながら非常に優秀な人で部下にも恵まれ、なかでも魯粛は孔明と同じ「天下三分の計」の秘策を持っていました。
魏の曹操と、北方の袁紹との史上有名な黄河の渡河点、官渡の戦い(西暦200年)がありました。この戦争に曹操が勝って、さらに劉備を攻めます。劉備は敗れて劉表に助けを求めます。
それはさておき、ここで我が日本のことです。中国の魏氏倭人伝に日本の女王「卑弥呼」(ひみこ)の記述があります。これはこの時代の書物です。西暦3世紀です。興味ある人はこの時代の解説書を読むことをおすすめします。
その7年後、蜀の劉備は三顧の礼をもって軍士、諸葛孔明を迎えることになるのです。これは帝王である劉備が、孔明を三回も訪ねて頭を下げて参謀になってもらった物語です。
そこでいよいよ孔明の「天下三分の計」が実行されるのです。孔明は呉の孫権と提携して、魏の曹操に対抗することを提案します。そして「赤壁の戦い」となり、呉・蜀連合軍の大勝利となります。これで孔明の「天下三分の計」が成ったのです。劉備は四川省の成都に入りました。関中を領有したした劉備は呉の孫権と不仲になり、曹操と孫権の結び付きが決定的となりました。
魏の曹操は司馬仲達を起用して、劉備と対抗します。
三国の戦いは激しくなり、孔明の活躍が最も発揮されることになります。
しかしながら孔明は「五丈原」の戦いに病い倒れ、死にます。そこで計略「死せる孔明、生きる仲達を走らせる」ことになります。
その後、魏は中国全土を支配することになり、三国時代は終わります。
この時代には多くの人材が輩出し活躍しました。その人々がどのように活躍したか、またその時代背景はどのようであったか、それを知るにはいろいろな本を読むことです。いままで感想を書いてきた吉川英治作「三国志」をはじめに読むことをおすすめします。文庫本で8巻という長編ですが、次から次へと変化する場面にあきることなく引きつけられます。
次には司馬遼太郎作の「項羽と劉邦」で心を踊らせ、海音寺潮五郎の「中国英傑伝」で多くの英雄を知り、陳舜臣の「小説十八史略」で知識を深めることをおすすめします。この後、寺尾義雄作の「諸葛孔明の生涯」を読めば、あなたは中国の春秋・戦国時代の権威です。
それでは、あなたの歴史知識に期待しております。