モドル  イッコモドル

谷崎潤一郎

1886-1965
エロと言ってしまえばそう。耽美と言ってしまえばそう。
ただの変態と斬ってしまえばその通り。
性的倒錯世界、フェティシズムの大御所。
粘着質で、どろどろというよりねとねとしてる感のある文章の運び。
教科書にも必ず載ってる名前なのに
授業では、ほとんど触れられないこの先生。
一度その文章に慣れてしまうとのめり込む。
読んでるだけで、どんな風体のヒトでこんな喋り方をするんだろうな、と予測してしまう。
何年かに一度くらい、すごく読みたくなるね。



「刺青・秘密」

  物語・・・・・・・・初期短編集。
            「刺青」(しせい)はホントの処女作。
            刺青師の清吉はこれぞ、と思える美しい女の肌を探し求めていた。
            理想の女と出会ったとき、二人は・・・

  ぴゃん・・・・・・10ページ程の短編なので一読だけだと、なんじゃこりゃ?
           という感じなのだが、谷崎・ザ・変態・潤一郎にハマってくると、
           うーん、奥が深い世界です。
           これを読んでTATOOに興味を持ったぴゃんきっしゅでした。フフフ・・・
           他の短編は忘れました。今度読み直した時に書き足します。


「卍(まんじ)」

  物語・・・・・・・大阪の上流階級の若奥様の園子が、自ら体験した異常な恋愛事件を
           作家に物語る。大阪弁本来の滑らかな語感と、情感漂う口調が、
           独特のエロティシズムを醸し出す。
           園子は若くして結婚し、実家の財力をあてにしている夫に物足りなさを感じていた。
           ふらふらと遊び歩く園子に何も言わない夫。技芸学校に通い始めた園子は
           美しく光り輝くような光子に出会う。
           急速に親しくなる二人。同性愛の関係になるのに時間は掛からなかった。
           夫は二人のただならぬ関係を怪しむが、二人の愛は深まるばかり。
           しかし、光子には他に男がいることが判明し、微妙な四角関係になってしまう。
           いつのまにか夫も光子に夢中になり、園子は光子を独占しようとし、
           誰もが光子を永遠に手に入れようと画策する。
           どの愛をを手にしても、いずれは破滅するしかない魔性の女、光子。
           彼女が求める究極の愛とは何だったのか。

  ぴゃん・・・・・・幼い頃に何年か大阪に住んでいたので、読んでいると頭の中が関西弁で
           いっぱいになってしまう。文章でこれだけ大阪弁を再現するとは
           凄い耳を持っているな。谷崎は東京人。
           一度読み始めると、するすると物語世界にはまって最後まで一気に持ってかれる。
           光子の魔性に引っ張られ、園子の狂気の愛に巻き込まれる。
           怒涛のごとくトラブルが起こり、恋の仕掛けや愛の罠、
           男と女、女と女のかけひきがあり、妖しい情念渦巻く人間関係。
           愛する、ということの汚さと純粋さが堪能できる作品。
           私は谷崎作品の中で一番好きだが、一度電車の中で隣に座った女の子が
           これを読んでいて、思わず顔を覗きこんでしまった。君も変態仲間っすか?





モドル  イッコモドル