<恋>

その声 その瞳 その手 その唇
忘れない
このカオスの記憶の中で
それだけは忘れない
決して愛さないわ
ずっと恋してる
あなたが私に触れた
その心に私はいなかったけれど
一瞬でも
あなたの前に私がいた
夢でいい
仮想でいい
私の小指に恋の証があるから
あなたは私を忘れていい

















<人生映画>

現実世界は悪夢のロングラン上映
いつまでもいつまでも終わらない
延々とフィルムロールは回り続ける
目を閉じて 少しの間眠っても
違う次元の悪夢の続き
夢は終わりぬ
夢は終わりぬ
出会い別れて傷付き裏切り葛藤する
次々と降り注ぐ災厄の嵐
黒い天使が降り立つまで
黒い鋏でもってフィルムをパチンと切り絶つまで
人生映画にエンドロールは流れない
この暗い映画館
観客は私
主演は私
茫洋とした表情で銀幕の中で狂い苦しむ私を見つめ続ける

























<扉の向こう>

固く閉ざした私の心
どの扉も冷たい鉄の扉で閉め切って
頑丈な南京錠と 決して切れない鎖で
守っている堅牢な砦
誰にも脅かされない不夜城
醜い素顔を仮面で隠した 私の分身が門番に立っている
誰が来ても決して扉を開けてはいけないよ
予想もつかない災厄が降って来るから

長い 長いときが過ぎて
門番が油断して眠っている隙に
扉の前に誰かがやってきた
ノックノックノック
門番は慌てて止める

この扉は開かないの
開けてはいけないの
大変なことが起きるよ
今のうちに引き返した方がいい
絶望が津波のように君を飲み込んでしまうよ

でも君は微笑んで 大丈夫だよ と言う

ダメなんだ
この扉の向こうには恐ろしい怪物がいるんだ
門番はよく知っている
パンドラの箱の中に希望など残らないことを

やめた方がいいよ と門番は力なく言う
でも 門番は君に魅せられてしまう
その優しさを欲しいと思ってしまう
言いつけを破って 扉を開けそうになってしまう

だって 君もつらそうだから
絶望を知っている目をしているから

扉の向こうから私が言う
門番、ダメだよ
犠牲者を増やすつもり?
私が何者か知っているだろう?
私はその人を きっと殺してしまうこと わかっているだろう?
これ以上 血を流すのは私だけで充分だろう?
扉を開けてはいけない

門番は迷う
君に本当のことを言うべきか迷う
何も知らずに ノックを続ける君
門番は途方に暮れる





















<廃墟世界>

ここにも 遠い昔 いろんなものが息づいていた
楽しいもの 幸せな想い 笑い合える人々
悲しみも苦しみも切なさも涙も
笑い飛ばして みんな一緒に世界を形成していた

でも今は

何もかも崩れ去り 全ての人は去っていき 私は1人 取り残された
幻想の世界は消えてしまった
灰色の空 誰もいなくなった街 私さえここにはいない
抜け殻の 空っぽの 私独り
冷たい空虚な風に吹かれて立ち尽くす
何も見えない地平線を ただ見つめている

1人にしないで
置いていかないで
今更 温度の無い涙を流しても もう遅い
私が壊したのだ
自分自身で 全てを振り払ったのだ

いいさ
孤独には慣れているだろう
どんな世界にいても 私はずっと独りだった
気づかなかっただけ
死神でさえ 私を見放した
永久に ここで じっとしていよう
もう誰のことも傷付けないように
もう誰にも裏切られないように

ここは私だけの 私独りの世界
私は平気
私は大丈夫
独りでやっていけるさ
自分で始末をつけられるさ






















<狂というあの日>

崩れ落ちる私 抱き止めてくれなかった
狂ってゆく私 引き戻してくれなかった
あなたは冷たい瞳で 一瞥して立ち去った
私は赤いキャンディ 口いっぱいに頬張って
死の世界に逃げ込んだ
あなたはそれでも追ってきてはくれなかった
約束したのに
何処までも一緒に行こうと あなた言った
いつまでも二人離れないと あなた誓った
私は待っている
荒廃した死の世界の入り口で ただ一人待っている
黒いウェディングドレス着て待っている
裏切りの鎖で縛られたあなたを
何十年でも何百年でも待っているわ
たとえ この身が滅びても
恨みの絆は断ち切れない
私の今日はあなたがいないと終わらない
























<ダンス>

踊り続けよう 呪われた黒いドレスで
踊り続けよう 脱げなくなった赤い靴で
一人 ステージに立ち 永遠に終わらない曲にのって
スポットライトを浴びて 涙をきらめかせて
あたしを見て 美しくなったあたしを見て
休むことも許されず 冷たい汗を流して
醜い世界の片隅で
優雅に踊るあたしを見て
でも観客席には誰もいない
拍手をしてくれる人はいない
褒め称えてくれる人はいない
祝福の花もない
美しいという言葉も無い
知ってるわ
わかっているわ
たった一人の孤独なステージ
あたしは踊り続ける
足が折れても 手が千切れても 気が狂っても
あたしは踊り続ける
命尽き果てても踊り続ける
孤独のダンスに終幕は無い
























 

<小舟>

目玉が一つ落ちちゃった
もう使えないから海に投げ捨てた
身体のあちこちの部分が腐り落ちてしまったから捨てちゃった
なのに意識だけ残ってる
心捨てられれば終りのはずなのに
何故 存在し続ける?
広大な青い海
遥か彼方の水平線
ねえ 舟を作ろうか
あの水平線の向こうに行ってみようか
砂浜で終わらぬ夢を見続けるのには飽きちゃった
舟を漕ぐ力が残ってるかわからないけど
小さな棺桶のような舟の上で
ゆうらり揺られて昼寝する
嵐に巻き込まれてしがみつく
きっと それでも舟は沈まないよ
別の世界に辿り付けるかも知れないじゃない
化け物みたいな私でも受け入れてくれる島にでも
さあ 舟を作ろう
木を集めて 舟を作ろう
ねえ 誰も手伝ってくれないんだね
だって 誰もいないもん
























<棺>

私を木の箱に入れて
何もいらないわ
大事な本も お気に入りの音楽も 涙した映画も
ただ 一番好きな黒い服を着せて
真っ赤な薔薇で飾って 埋もれるぐらいにたくさん
誰も来ないで
私は一人 地上の業火に焼かれて
煙になって 灰になって
石の中に閉じ込めなくていいわ
意味の無い言葉もいらない
私は独り何も持たずに旅立つから

泣かないで
私を忘れて
そして許さないでいいの
自分勝手な私を憎んでいいの
いつか 忘れるわ
私は赤い薔薇と共に散っていくから
もう思い出さないで

とても幸せよ
空気の中に溶け込んで 自我など無くなる
苦しみは彼方の空に
悲しみは深い海に
切なさは届かない土の中に
私は自由
手枷足枷首枷も外されて
いつのまにか 白い服を着て
血の色の薔薇は消えてしまう

さあ 私を木の箱に詰めて
解き放って
永遠の中へ































<糜爛>

焼け爛れた君に
苦しみ 哀しみ 切なさに 焼け爛れてしまった君に
私の皮膚を移植してあげるよ
私の内臓を詰め替えてあげるよ
君の火傷を見ていられないから
だから こっちにおいで
今 楽にしてあげるから
大丈夫だよ 痛くないよ
もう涙を流さなくていいよ

いらない?
ああ そうか
私の魂は穢れているから
私の身体を貰ったら呪われるから

違う?
ああ そうか
焼け爛れているのは私も一緒だったんだ
私の心も身体も人の形をしてないんだった

じゃあ せめて
薬を探してくるよ
この世を這いずり回って見つけてくるよ
私の心臓を置いていくから 待っていて
腐りかけてて悪いけど
約束だよ
待っていて
必ず戻ってくるよ


























<月光>

月の光を浴びるがいいよ
昼の太陽でなく 闇に輝く月の光を
真っ白な清廉な月
この汚い世界を離れて
月の荒野で独り暮らすの
心寂しい人々が時々私のいる月を眺めてくれる
私はその視線を感じて
冷たい愛を送るわ
真っ白い月の光と共に


















<戦場>

毎日が戦いで
休む間もなくて
一瞬の隙もなく
眠ることも出来なくて
凍てついた心温められなくて
傷付いた体治す暇もなくて
銃弾は限りなく飛んできて
あたしの体をかすめていく

血は流れ続け
涙が零れ落ち続け
残った弾丸は少なくて
薬ももう無くて
食料も無くて
それでも独り戦い続ける
敵は全世界
みんなであたしを排除しようと進軍してくる
負けるものか
お前らなんかに殺されるものか
あたしは最後の崖っぷちまで追い詰められて
自分のピストルで頭を打ち抜くのさ
そして絶望の淵に独り堕ちていくのさ
それまでせいぜい あたしを追い詰めてごらん























<カタルシス>

綺麗になりたい
清廉な魂になりたい
白い服の似合う
笑顔のこぼれる
そんな人間になりたい

血みどろの私
満身創痍の私
泥まみれの私
どす黒い黒い心の私

どんな雨が降れば
洗い流せるだろう
どんな雷が落ちれば
生まれ変わることが出来るだろう
この穢れた魂に
天の光は降り注ぐのか





















<骸>

体中に張り巡らされた血管に黒い薔薇の棘が刺さっている
痛くて 苦しくて 悲しくて 息が出来ない
吹きさらしの海の上に浮かぶ
無防備な作りかけの心に冷たい風が突き刺さる
壊さないで
傷つけないで
願いは届かずに私は白い浜辺で崩れ落ちる
それならいっそ もう触れないで
中途半端に助け起こそうとしないで
私はこの世界のすみっこで独り朽ち果てていくから
黙って行ってしまって
肉体が腐り落ち 黒い薔薇のようになる私を見捨てて




















<虚無の空>

青い広い抜けるような青空
まだ少し早い9月の秋風の中
私は独り歩く
なのに 涙は流される
こんな気持ちのいい秋晴れの日でも悲しみは溢れる
目は虚ろに空を見上げる
そこに喜びは無い
どうして奪っていくの
何故失っていくの
どうやって乗り越えていくの
答えは未来の自分の中
今はただ零れ落ちる涙を放っておくだけ
とめどなく
枯れることなく
流れ落ちる
空はただそこにあるだけ

















<白い手>

手を伸ばせばすぐそこにある
求めていたものは いつだって目の前にあったじゃないか
救いの手は差し伸べられていたじゃないか
泣いてばかりいて うつむいてばかりいて 気づかなかっただけ
狂気に魅入られるのは私の弱い心
闇に囚われる私を引っ張り上げてくれるその手
強くなるのには勇気がいる
強くなるには力がいる
自分一人じゃ出来ないから
さあ その手をとって
光を見ない振りしないで
顔をあげるだけでいいんだよ
いつまでも待っててくれるんだ
眩しい光をわけてくれるんだ











<ナイフ>

あたしはナイフを持って頬に当てる
冷たい感触 危ない陶酔感
滑ってナイフは首に落ちる
力を込めれば すべては終わるのに
生きることは苦しみ 痛み 泣き叫んでも救えない
後何十年耐えれば許されるのだろう
あたしは命を絶つことも出来なくて
ナイフを手首に当てて 肌を引き裂く
流れる血
一本の筋になった傷口から流れ出る血の赤い玉
狂いだすあたしは もっともっとと手首を切る
赤く紅く流れ出る血 腕は血まみれ
肉体の痛みで心の痛みはぼやけてゆく
存在の息苦しさ 焦燥感 喪失感 絶望感
血と一緒に流れ出ていけばいい
それでも
それでも
生の苦しみは消えていかない
つらい つらいんだ 生きるのがつらいんだ 意識があるのが耐えられないんだ
体さえ張り裂けそうな心の痛み
いっそ胸にナイフを突き立てて
全てを終りにしたいのに
それすら禁じられている
だから だから あたしはせめて手首を切って血を流す













<救済>

ねえ 抱きしめて
強く抱きしめて
骨がきしむくらい 抱きしめて
言葉なんていらない
あなたのその腕を求めているの
ねえ 手を握って
温かいその手で私の手を包み込んで
空っぽの体なんていらないの
表面だけの笑顔なんていらないの
仮面なんて かなぐり捨てて
本当の顔を見せて
真実の心を見せて
独りぼっちの私を抱きしめて
壊れるぐらい抱きしめて
そのまま私は崩れ落ちて消えてゆくから












<火星人>

私を迎えに来て
ここは私の居場所じゃないみたい
街の雑踏に紛れても私だけ異質な存在
家にいても私は異常な危痴害
他人と話しても私の言葉はすり抜けて行く
この地球じゃない
私の居るべき場所に連れてって
私はここにいるよ
早く見つけて
私には翼は無いから
地球の重力に縛られてるの
逃がさないって重く地に引っ張られるの
私を迎えに来て
独りじゃ何処にも行けないから















<覚醒>

動き出せ 脳髄
狂いだせ 精神
感じるんだ 考えるんだ 壊すんだ
言葉を繋いで 形を作るんだ
私の宿業
変えて行け
変わって行くんだ
残り少ない力を振り絞って立ち上がれ
ボロボロの心を掘り出して
ガタガタの身体を引きずって
傷付き 疲れ果てても
歩き出せ
私が「世界」になるんだ










<闇の業>

中途半端はダメだぜ
入り口の門の前でうろつくな
ためらうな
何処までも堕ちてゆけ
この世の果てまでも行ってみろ
本当の絶望を味わってみるがいい
真実の狂気に支配されてみるがいい
お前はそれから逃れられない
行くんだ
それがお前の生の意味
闇を我が物にすることがお前の価値
それを抱えたままこの光の世界を生きるんだ
それがお前の宿命







<雪の降るまで>

私の苦しみ 私の悲しみ 私の絶望
体も心も粉々に砕け散り
罪の炎で焼き尽くそう
存在することの忌まわしさ
意識を保つことの厭わしさ
全て炎の中へ放りこめ
この胸の重たい不安感は何?
安らぎが私に舞い降りてくれないのは何故?
私の涙で炎をおさめて
闇の中でひたすら待とう
全ての焼き痕を覆い尽くす雪が降るまで







<愛の詩>イスキアバージョン タイトル改
<詩人の血>

僕の体を世界にあげよう
僕の心を君にあげよう
僕の手首 僕の腕 僕の足 僕の内臓 僕の血 僕の心
僕の全てを世界にあげよう
目を閉じれば溶けてゆく
僕のためのものはもういらないから
僕は死んで君のものになるから
僕は地となり天となり森となり風になって世界と溶け合う
僕は永遠となって君のために生きる
忘れられてもいい 赦されなくてもいい 穢れたままでもいい
ただ運命の罪を背負って血まみれのこの愛の詩を歌い続けよう








<愛の詩>

私のすべてを捧げよう
君にすべてを与えよう
私の手 私の足 私の心臓 私の血 私の心
すべてを君に捧げよう
私はバラバラになって土に還って植物となり
世界の一部になるんだ
自我などいらない
私自身なんていらないんだ
ねえ君 私の記憶を捨てて
私を許して そして忘れて
世界の破片になった私を風に感じてくれるだけでいい
誰にも聞えない声で愛の詩を歌うから








<地平線の彼方>

何処にも行きたくないんだ
カエリタイ
でも何処に?
死は魅惑的に誘いかける
無駄なことなど何も無いはず
あの日 あなたは教えてくれた
いつまでも届かない何処かへ
私はいつか旅立つのだろう








<遠い光>

私は手の届かないものを求める
それは永遠に私のものにはならない
同時にそれは私だけのものだ
廃墟のビルの中に光を見た
そこに誰かいるのかい?

あなたはもういない
私に人生から姿を消した
さようなら あの日の私
出来るだけ早く死に切ってくれ
そして二度と目覚めるんじゃないよ







<紫煙>

煙草煙草煙草
あたしは煙草に火をつける
煙を吐き出す
その煙の中に何かを見出そうと目をこらす
何も見えやしないさ
闇の中 線香花火のような煙草の先の火
見つめながら 灰になっていく煙草を哀れに思う
消えていく
崩れていく
口の中に苦い味を残して煙草を消す
吸い終わると あたしは後悔する
また一つ あたしは汚れた






<血まみれの荒野>

腕から血飛沫
心から血飛沫
どこまで切れば血液は無くなるの?
どこまで行けば地の果てに辿り着けるの?
靴を失くした
靴下も無い
手袋はどうした?
コートは何処?
Tシャツはボロボロ
ジーンズは穴だらけ
血はとめどなく流れ続け
僕の命を奪っていく
それなのに僕は歩いていく
いつか崩れ落ちるまで
いつか這い蹲っても前に進めなくなるまで
僕の血が心がなくなるまで







<風の中で>

過去も未来も現実もすべて闇色の私を吹き飛ばして
風よ吹け 私に向かって
何もかも剥ぎ取って 真っ白になった私を連れて行って

ねえ すべてゼロにリセットすることは出来ないの?
もう一度一からやり直すことは出来ないの?
私のためでなく ママのために
今度こそうまくやって見せるから
今度こそ生まれてきてよかったと言ってみせるから

かなわぬ願いはわかってる
でも祈らずにいられないの
私でなく ママのために
私でなく 他人のために
私のためでなく
私の自我を失くしていくの

今からでも遅くないって言ってくれるの ありがとう
でも壊れてしまったの 私
割れたガラスはもう元に戻らない
砕けた私を拾い集めて骨壷に入れても
反魂術はまやかし
生まれ変わることは出来ないの
風よ吹いて
私の欠片を吹き飛ばして







<破滅>

誰か助けて
ここから出られないの
自分の力で這い上がれないの
ねえ 薬をちょうだい
意識がなくなるくらい
どこかに飛んでいってしまいたい

誰か助けて
苦しいの 手を引っ張って
愛もいらない 嘘はキライ
現実世界など壊れてしまえばいいのに
ねえ 薬をちょうだい
自己が破壊されるくらい
粉々に砕け散りたいの

誰も救えない私を
壊してしまって その武器で
半端は嫌よ
一気に殺してね
ねえ それが愛でしょ?
それが私が求めた愛でしょう?






<鬼は何処に潜んでいるか>

愛って何だろう
信頼って何だろう
形の無いものは誰にも判らない
形の無いものは裏切りやすい
目に見えないものは誰も信じない
目に見えるものしか人は見ようとしない

夢って何だろう
希望って何だろう
形は無いのにみんな信じたいもの
目に見えないのにみんな持ちたがる

苦しみとは何だろう
悲しみとは何だろう
形の無いものは誰にも判らない
形の無いものは誰も信じられない

人間は何も持ってない
自分で探して作り上げていく
それが人生か?そうなのか?





<水底>

湖の底から湧き出でる赤い水草
いとみみずのようにうねる 生きている
足に絡みつき 水底に引きずり込み 取り込もうとしている
彼女が絡みつかれ
彼女は死の淵に飲み込まれようとした
あたしは水にもぐりこみ ナイフで赤い水草を切った
彼女は助かっただろうか
あたしは救えただろうか
赤い水草 足に絡みつく
赤い水草 手を引っ張る
赤い水草 死を誘う
そしてあたしは旅に出る








<愛の呪縛>

ママの呪縛
死なないで 逝かないで 諦めないで 食べて 動いて 笑って
ママのお腹を痛めて産まれた私
ママにとって大切な「肉親」
ママを愛してる 大事だと思う 大切に思う
でもその呪縛が私を苦しめる
その愛が息苦しくて身動きできない

友達の呪縛
私たちほど繋がりあった友達はいない
わたしのために生活を放り出して駆けつけてくれた
私のために泣いてくれた
ゆっくり歩いてくれる 倒れても助け起こしてくれる
私が私自身で命を絶ったら 裏切ったら
彼女達は一生心に傷を負うだろう
その友情の呪縛が私を苦しめる

呪縛とは愛
それを捨てたあの人は私を本当に愛していたのかもしれない
私が苦しいとあの人も苦しい
その愛の呪縛を解いた
裏切りは愛
見捨てることに寄って私を解放した

なのに私は苦しみにもだえながらも呪縛を求める







<彼女>

彼女はもう限界だった
薬だけが彼女を救う手立てだった
意識が飛べば苦しみは遠のく
その感覚を楽しむ
自分が堕ちていくのを楽しむ
誰も彼女を救えない
例え彼女を大切に思ってくれている人でも
全ては壊れてしまった
死んでしまうがいいのに
それすらも禁じられている
彼女の大切な人々の心を守るために
そのかわりに彼女は自分の苦しみに押し潰されそうになる
全てはどこから始まったのか
もうそれは問題じゃない
ただそれはそこにある 彼女の背後に
苦しみは苦しみでしかなく理由は無い
彼女は怯える
また死への衝動に駆られていくのを
押さえ込むために薬を飲み続ける
もう治ろうとさえしない
誰か彼女を助けて





<赤い林>

赤い 赤い木が揺れている
幹が赤い 枝も赤い 赤い木 実の無い赤い木
葉の無いその木は枝が落ちる
少年達は走る 赤い木の前を ボールを追って
私はいつまでも言えない 赤い木の枝が毒だということを
だってみんな楽しそうだもの 邪魔したくないもの
絶望の淵に立っている私が見えるかい?
ただ独りで黒い谷の底を探しているのがわかるかい?
崖の向こうの少年達は気付かない
赤い木が毒だということを
私が赤い木に触れたくないことを




<砂浜>

広い砂浜の中に 独り立っていた
街は砂に埋もれてしまう
遠くに水色の海が見える
もうほとんで埋もれている家の中で電話が鳴っている
誰かが私を呼んでいる

新しい時代の人々は何も知らずに
サーフィンをしようと我先に海へと駆けていく
駄目だよ その海は 駄目だよ まだ冷た過ぎる
電話は鳴り続け 私は何も出来ずに立ち尽くす




<命乞い>

私の言葉が血を流す
私の心は血まみれで 本当の心は何処なのか わからない
どこか遠くへ 遠くへ連れて行ってくれないか
誰も居ない あなたさえ消えてしまう所へ
もう何も見たくないんだ 聞きたくないんだ
目をえぐり出したい 耳を切り落としたい
今日もまた電波が聞える 通り過ぎて行く
そろそろ私を呼んでくれてもいいじゃないか
充分苦しんだよ 存分に悲しんだよ 涙はもう枯れ果てたんだよ
連れて行って 置いてかないで
私は一人では何処にも行けないんだ

私の言葉
言葉が溢れ出す
私の心臓が溢れ出す
腕から血飛沫 瓦礫の中のこころから溢れ出す血飛沫
暗い青い深海の底で
私はとりこまれ 動けない
私は見えない水面の星を探す
私は闇に永久に捕まった
全身の血が尽きるまで 逃げられない




<視線>

見ている 私を見ているの 背中に気配を感じるの
泥沼の中から目だけ出して こっちを見ている
私は後ろを振り向けない
今にも長い手を伸ばして 足首をつかまれそう 引き込まれそう
私という死神に 自分という沼に




<黒い檻の中からの叫び>

暗黒の心を葬り去れ  闇心
生まれたのが罪 生きることが罰  罪と罰
何もない場所へ逃げよう  呪縛

別離 死別 裏切り 嘘 愛
見えるモノは信じない 見えないモノも信じられず 闇の中を生きるしかなく
絶望と失望

死に支配された心
暗黒に沈む意識
どこまで行けばいい?
誰か私を止めて
崩れ堕ちるから

傷だらけの心から溢れ出る言葉
拒否された叫びを 捨て去り 失ってきた
戻る場所はあるのだろうか?
いや、もういいの
誰か連れて行って 誰もいない場所へ 独りでは歩けないから





<あの世界へと>

殺せなかった私自身
あの世界への扉は閉められた。
少しでも開いているのを見たかい?
私には行く資格がなかった。
この世界で何一ついいことをしなかったから。
私の中で死んだ私の一部。
それはそこにあるのかい?
本当に死んだとき、私は私自身と出会えるだろうか。
あの世界で。





<窓>

はめ殺しの窓 届かない青い空
固く閉められた扉 感じられない春の風
自分を閉じ込めた 自分と二人きり
私と私しかいない空間
誰もいない 声も聞えない
掘り下げる堕ちていく私
苦しみしか顔を出さない私の頭の中の部屋の扉
嘲笑っている
自分で私を追い詰めた私を
ねえ、死ななくてもいい
この窓を開けて
飛び降りさせて






<サヨナラ>

サヨナラ サヨナラ
サヨナラ アコガレノヒト
ジカン ハ アル ト オモッテタ
デモ ナカッタンダネ
スコシヅツ シタシクナレレバイイ ト オモッテタ
ネンマツ マデニネ 
デモ イッテシマッタンダネ サキニ
サキニ イクナ ト イッテタジャナイノ
イイヨ
トドカナクテモ イウヨ 
サヨナラ 

サヨナラ
アコガレノヒト






<心中>

頼む
連れて行ってくれよ
あたしも
逝くんだろう?
あたしも一緒に逝くよ
どうして駄目なのさ
理由を言ってよ
資格?価値?理由?
そんなばかみたいな理屈なの?

逝くときくらい、独りでやれよ 今まで誰かに依存しきってきたんだろうが
わかってるさ
知ってるさ
だから、あたしはあたしと心中するのさ






<荒廃>

ここは何処かしら
いつのまにこんな色彩の無いところに来てしまったのだろう
見渡す限りの荒野
何も無い 風も無い 空も無い 水も無い
ただ私独り
空っぽの私独り立ち尽くす
昔 きっとここにはいろんなガラクタが溢れ返っていたのだろう
楽しいモノ 大好きなモノ 悲しいモノ 苦しいモノ すべていとおしいモノ
たくさんの過去の欠片 未来の輝き 今の揺れる想い
今はもう全てが死に絶えた
私の目に映る現実世界はモノクロームの荒野
いいさ 孤独だけは永遠に私と一緒にいてくれる





<破滅後>

破滅は物語
心を引き裂くストーリー
泣いて叫んで悲しみ苦しみすがりつき突き放されて
何もかも壊していく 全てを傷つける
そして破滅した

でもその後は?

破滅した後はどうすればいい?
それでTHE ENDを迎えられなかった私はどうすればいい?





<廃人>

心が死んだ廃人は私
何も感じてないの
苦悩も悲哀も失望も絶望も
殺してしまった
まして喜びなど希望など光など
見える筈も無い

でも私は笑う
誰かのために
でも私は喋る
誰かのために
でも私は歩いて見せる
誰かのために

私は死んだのだけど 存在だけはしている異端な生きモノ
私は死んだのだから 自分のために生きられない

だから誰かのために生きているふりをする

私のために泣いてくれた誰かのために
私のために身を削ってくれた誰かのために

私は苦しみを殺し 孤独と手を繋ぐ
重い私という生きた屍を引きずって歩いて行く





<叩くのは誰?>

お墓の中で死んでいる私を
引きずり出して棒で叩くのは誰?
死んでまで痛い目に遭うのは嫌

いいえ それは罰

誰かを苦しめた私の罪
逃げ出した私の罪
全て放り出した私の罪

私が死んでも痛いのは償いになりますか?
もう逃げるトコロは無いので
叩かれ続けて痛がる私を見ていましょう

でもよく見てごらん
叩いてるヒト 私の顔をしてるでしょう?