モドル イッコモドル
<デリー到着!インドの騙し洗礼>
2005年2月3日。
私は旅の相棒、通称「ウサギ」と共にインドへ旅立った。
「旅行」とは楽しんでくるもの。「旅」とは何かを感じてくるもの。
ウサギと私は小学校からの幼馴染であるが、幼い頃や学生時代にはそれほど親しかったわけではない。
共通の友人の結婚式で再会し、流れるように自然につきあいが再び始まり、「旅仲間」となった。
科学的根拠は無いという血液型占いだが、私はやはり血液型によって性格の傾向があると思っているほうなので
それで言うと、私はB型俺様マイペースのようなフリをしつつ、実は典型的神経質のA型人間だ。
おまけに躁鬱の激しい分裂症気味の激烈不眠症の精神病者。
ウサギは精神的に多少「普通人」より問題を抱えながらも、自分のことはほとんど話さない。
「楽しいコトキャッチ電波」を持っていて、彼女が乗り気なものはたいてい楽しい。彼女が黙ってしまうコトはたいてい楽しくない。
O型おおらか何でもいーよ人間に見えつつ、実は典型的俺様ワールドのB型人間だ。
要するに二人とも人当たりがいいわりには、種類の違う気難しさを持った癖のある人間なのである。
こんな二人がどうして何度も一ヶ月以上にわたる「旅」が出来るのか。
どんなに親しい友人同士でも愛し合っている恋人同士でも、長く旅が出来ない場合が多い。
特に海外に行ってしまうと、主に言語の問題で嫌でも「二人っきり」になってしまうのだ。
日本でたまに会って遊んでいるだけではわからない、相手の嫌なトコとかも目につきやすい。
ただ、私達には共通する「孤独癖」がある。
根本的に精神が「独り」であることを求めている。
そのたった一つの共通点が「二人の旅」を可能にする。
私達はずっと一緒にいても、「独り」になりたいときは何時間でも黙っている。
そのタイミングが合うのであろう。メイビー。
ウサギから言わせれば、「違うけど」とかサラリと流されそうだが、ココはぴゃんの場所なので反論の余地ナシ。
新世紀になってから、私の精神病が悪化の一途を辿り、精神的にも肉体的にも金銭的にも旅に出るのは無理であった。
しかし、昨年2004年の秋くらいから病状が安定し、少し外に出て働いたりも出来るようになった。
忙しいウサギも、冬のこの時期に少し暇が出来る。
ヨシ!行くか!!
まずは何処に行くかを話し合った。
もちろん、二人の長年の憧れの地「天空の国チベット」があがった。
しかし。
この真冬。マイナス14度の世界に耐えられるか・・・・・。
さすがの「何とかなるでしょ」ウサギも躊躇。
私も貧血持ちの虚弱体質なので、高山病が怖い。
装備も重くなるし、用意も大変で航空券なども高い。
ダメ。ハイ、次!!
スペインにも行ってみたい。だがヨーロッパは物価が日本と変わらない。
無理。ハイ、次!!
カンボジアにも行きたい。ミャンマーもいい。タイから入って国境越え・・・。いいねぇ。二人は陸路で国境を越えるのが好きだ。
でもさぁ・・・・・
私とウサギは顔を見合わせた。
ニヤリ。
二人とも「地獄」を求めている。
東南アジアはいろいろ問題がありつつも、やはり人々は優しく穏やかな地だ。
ココはやはり・・・・・インドダロ!!!
そんで、陸路でネパール入りダロ!!!
インドへは99年に一度行っている。あの強烈な国をもう一度見たい。そして今度こそヒマラヤを見たい。
いざ、「地獄のような天国」インドへ出発だ!
コレ、飛行機の窓からヒマラヤが見えてるんすよ・・・・わからないっすね・・・・
思い立ってから2週間程で、私とウサギはインドの首都デリーの空港にいた。
ガイドブックにもいろいろ載ってはいるが、前回来たときも空港から騙された。
このインドという国は誰も彼もが、人を騙して1ルピーでも多く金をせしめようと虎視眈々と狙っている。
もちろん外国人はカモ。そして平和ボケのアホウの日本人は大カモ。私達のような見かけボンヤリのインド初心者みたいのはグレイトカモカモだ。
だが、二回目だ。
今度こそカモられてたまるか。
オイコラ!インド人!てめーらの騙しの手口なんぞお見通しだ!やれるもんならやってみやがれ!
まずは両替。
ちゃんとした銀行であっても、必ず渡された金をその場でチェックすること。後ろに長蛇の列があっても気にしてはいけない。
ちゃんとレート表示通りの金額があるかどうか。銀行員は少なく渡して、自分の懐に入れてしまうからだ。
札が少しでも破れてたら新しい札に交換してもらう。破れている札は街のどこへ行っても使えない。物乞いにやっても拒否されるくらいだ。
デカイ金額の札ばかりもらっても、街ではお釣りがもらえない。細かい札に変えてもらうこと。
ヨシ。クリアー。
やるね!ボク達!アホウな顔してても、基本はしっかりしてるわよ〜ん。
(外貨レート、基本の物価は「インド貧乏旅記録」目次に書いてあります→イッコモドル)
次は空港から出てタクシーに乗り、デリーの中心街近くの安宿街に行くことだ。
通称「メインバザール」。タイで言う「カオサンロード」のようなとこ。ニューデリー駅のまん前なので便利。
要するに、外国人が集まっていて安宿がたくさんあって、外国人用のカフェがあったりアジアかぶれの洋服やアクセサリーが売ってたりするわけだ。
そこでは両替も何処でも出来るし、トラベルエージェンシーが山ほどあるし、禁酒国だが酒も飲める。
カフェで長居も出来るし煙草を吸っても大丈夫。インドでは普通の食堂やチャイ屋で長居は出来ない。食ったら去れ。飲んだら去れ。禁煙は当たり前。煙草は外で吸ってさっさと去れ。ってなもんだ。
そしてインドお約束のイリーガルなモノも普通に売られている。
とにかく、ソコへ行けば後はなんとかなるってことだ。
私とウサギは貧乏旅なので、もちろん安宿。もちろんホテルの予約なんかしていない。
空港内の政府のタクシーチケットを300ルピーで買って、運転手の紹介してもらってから外に出る。
空港の外に山盛りのボッタクリタクシー運転手ドモが客引きをしているが、全員無視。
うむうむ。
うまくいっている。
インド人客引きにありがちな英語まくしたてもない。黙って運転している。エライぞ。今回はうまくいきそうだ。
空港から約40分。
何かのオフィスの前で止まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・またかYO!
前回は、メインバザールの全容を知らなかったのでココで降りてしまい、中心街から離れたホテルに一人12ドルも払って泊まってしまったのだ。
12ドルて。アホだな、自分ら。見るからに安宿なのにドル払いとかあり得ないから。ルピーにしたら一人約500ルピーだから。二人で二泊出来るっつの。
という、前回の教訓があるので、私達は断固としてタクシーから降りなかった。
「ココはメインバザールじゃない!さっさと行け!何も聞きたくない!」
トラベルオフィスから身なりのいいインド人青年が出てきて、英語で何かまくしたてている。
知らん。あいきゃんのーっと・いんぐりっしゅ〜。
「GO!MainBazal、GO!GO!」
すっげ、単語連発英語。アホ丸出しだが、ココで話を聞いてしまったら終わりだ。
インド人は諦めて、もう一度タクシーに乗って運転を始めた。
どうだ。押し通したぞ。負けるか!ゴルァア!!
しかし、またもやタクシーは止まる。なんかホテルの前。今度は何!!
タクシー運転手はホテル前で立ち話をしているインド人青年に何か聞いている。
ソヤツが寄って来て、また英語でなんだかんだ言っている。
あー・・・・・・・・・もう・・・・・・・・。
私達は、さっきのヤツもコヤツも、実はなんと言っているのかわかっていたのだ。
「今、デリーには地下鉄工事が行われていて、道が混乱していてわからない。そしてメインバザールはもう無い。だからココで降りて紹介するホテルに泊まれ」
無いわけあるか!タクシー運転手が道わからないわけあるか!
インド人相手に反論してもムダなので、「メインバザールが無いのならそれでもいい。ニューデリー駅に行け。そこまで行けば自分でなんとかする」と伝える。
すると、さっきまでホテル前でそのインド人青年と話していた外国人女性が、呼ばれてしぶしぶやってきた。
あ。日本人。
彼女の説明では、ココはニューデリー駅の近くではあるが歩いては行けない距離。地下鉄工事で道が毎日変わっていき、誰もが混乱している、とのこと。
なんだかもうわけわからない。
「じゃ、何処でもいいからニューデリー駅の近くまで行って」 疲れてきた。何度同じコトを言えばいいのだろうか。
「ニューデリー駅は今では5つの入り口があって、車では何処へ行けばいいのかわからない」
車で近づけない駅って何さ。
「いいから行けって言ってんダロ!!! ぐだぐだ言わずにさっさと車を出せ!!!! ゴルァァアア!!!」
見かねたインド人青年がタクシーに乗り込んできて 「俺が道案内してやるよ」 と言う。
ハイハイ。もうどうにでもしてください。
さっきから同じところをグルグル回っているコトぐらいは、私達にもわかっている。
いくら土地勘が無いからって目玉くらいついてるっての。
そしてまた、駅でもメインバザールでもない場所のホテルの前に着く。
エンドレス・・・・・・・。
空港を出てからもう2時間近くが経とうとしていた。
夕方18時に着いたので、もう20時を回っている。インドは準軍事国で治安がいいとは言えない。私達は夜21時以降はなるべく外に出ないようにしていた。一応、女子だしな。
ウサギと相談して、この市内グルグルエンドレスタクシーから降りることにした。ラチがあかねぇ。
リュックを背負って、さっさと歩き出した。
「おいおい!目の前にホテルがあるのに、何処へ行くんだ!?メインバザールはそっちじゃない!」 とインド人青年。
タクシー運転手も私達からチケットを返してもらわないと、仕事終了の報告にならないのでついてくる。
「じゃあ、どっちがメインバザールなのだ?」
「あっちだ。でも治安が悪いから、今日はココに泊まれ。明日、俺が案内してやるから」
「案内などいらん。前に来てるからわかってる」 歩き出すボクら。
「そっちじゃない。メインバザールはこっちだ。でも、ココはいいホテルだから、ココに泊まれ。明日、俺が案内してやるよ」
エンドレス・・・・・・・・。
ウサギは、まだまだやる気だったが体力の無いぴゃんきっしゅが折れた。
見ると、外観はキレイな中級ホテル。フロントもあって、装飾も凝っている。何より、ロビーに白人のカップルがいた。
世界にはびこる白人バックパッカー。このドケチでパワフルな人種がいるのだから、まあ大丈夫なんだろう。
「ウサギ、今日はココに泊まらない?ボクちん、もう疲れたよ・・・・。明日の朝、改めて二人で駅探そうよ。その代わり、値段交渉はあたしがするから」
「うーん・・・ぴゃん、疲れたんだな?わかった」
二人でそのホテルに入って、フロントへ行く。成り行きを見ていたホテルのオヤジはニッコニコ。
当然、インド人青年は案内してきたマージンを貰うためについてくる。タクシー運転手もついてくる。
値段交渉開始。部屋も見せてもらい、ホットシャワーが出ることも確認して二人で500ルピーで泊まることに決定。
私達の予算では、一泊二人で300ルピーが限度だが、わりとイイホテルだし足元見られてんのはわかっていたので、この程度の上乗せ加減なら許容範囲だ。
日本円に換算して、一人600円で泊まったことになる。
ヤスイ!と思ってはいけない。ココは日本ではない。インドなのだ。服屋の雇われ店員が月に1000ルピーの給料で働く国なのだ。決して安くない。
翌朝。
右も左も上下さえもわからない外国人旅行者を、ニューデリー駅に行かせまいとする街ぐるみの作戦にエンドレスに引き回される。
何故そのようなことをするかというと、ホテルなり旅行会社なりに外国人カモを連れ込んだ者はマージンが貰えるのだ。
普通に働いている普通のインド人でも、自分に時間さえあればこうやって小遣い稼ぎをしているのだ。
街ぐるみというか、国ぐるみというか。
わかっているのに抜け出せないエンドレスでラビリンスなこの状況。
翌朝の街。向かって左に写ってるのが 「リキシャ」 と呼ばれるバイクを改造したタクシー。
首都デリーでも、朝市はこんな感じ。何処でも一緒。
リキシャに乗って移動するも、エンドレスで駅にはつかない・・・・・。このオヤジめ〜。
案内してやる攻撃を続ける通称「ラーおじさん」。名乗られたのだが、どうしても発音できなかったのだ。名前の最初のラだけ聞こえたので。
道を歩いていると次々に声をかけられる。みな言うことは同じ。「アイツは悪いヤツ。俺はいいヤツ。だから俺についてこいよ」 誰でも同じだって・・・。
えーっと・・・顔をカットしておりますが、ウサギはすごく嫌な顔して写っております。めっさ嫌がっております。
ぴゃんきっしゅは写真撮るからと言って、コヤツラから離れました。餌食となったウサギ。スマヌ。
それにしても、気づかなかったが、客を取られたラーおじさんたら、まだ後ろにいたのね・・・。
そして、この80年代前半に原宿にでもたむろってたようなこの若い男とは旅の最後に再会を果たすことになる。
その件は「騙し・ごまかしの手口」で、紹介いたしましょう。
つーわけな感じで、街中を引き回されてるわけでニューデリー駅には意地でも自力で行かせない!といった状況。
冬とはいえ、昼になってくると気温も上がってきて大きいバックパックを担いで移動してるわけなので、
そろそろ体力の無いぴゃんきっしゅが限界。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういい。わかった。騙されないとこの街から出られないんだな?がっつり金落としていかないと何処にも行かせない、というわけだな?
わかったYO!ボッタクリの騙しの旅行会社で話だけでも聞いてみようじゃないの!
さっきから何軒もその手の旅行会社に連れていかれてるのだが、無料の地図を貰うだけで出てきていたのだった。
取りあえず入らないと、ついてきてるヤツが傍を離れないので。
うざ!うざ!うざすぎる!! 人様の国でこんなこと言うのもどうかと思うのですが、うざいからぁぁぁあああ!!!!!
この最後に残った勝者の若造に連れてこられた旅行会社で話を聞いてみることにした。
ウサギは嫌がったのだが、ぴゃんきっしゅがもうこれ以上歩けないと判断して折れてくれたのであった。重ね重ねスマヌ・・・相棒よ・・・。
旅行会社では、まず何処へ行きたいのか何をしたいのかと聞かれる。
まあ当然だ。
しかしなんとしたことか、私達はただガンジス河のあるヴァラナシという聖地に行きたいという計画があるのみ。
それ以降のことはヴァラナシに着いてから決めるつもりだった、という無計画っぷり。
しかも、ヴァラナシからネパールに抜けようと思っていたのだが、政情不安定で出発前日くらいに危険度MAXになっていて入国は無理。
だから、「We waht to go Varanasi. We have no plan.」 とアホ面でちゃらっと言う。
さすがのトラベルエージェンシーも唖然。アホの子ですか?こやつらは?という顔。日本からインドにまで、はるばる来ておいてノープランって何やねん、と。
旅行会社のメガネインド人が英語で延々と、インドの観光地の素晴らしさを説く。
英語のわからない中学生以下の私達はポカーンと聞いていた。
それくらい知ってるよ。ガイドブックで読んだ。わかってるってば。だからヴァラナシに行くんだってばよ。
「ヴァラナシは今、祭り中で電車の切符が取れない。一週間後なら取れる」
「はぁ!?デリーなんかで一週間も潰れたら何も出来ないよ!」
ハイ。この時点で負けたも同然。リアクション返しちゃった。なんでそういかにも怪しい旅行会社のヤツの言うこと信用するかねぇ。
メガネインド人、ニヤーリ。釣れたぁ!と思ったんだろね。
「その一週間をデリー近くの観光地をミニバスでツアーを組むから行って来い。インドに来て観光しないなんてもったいない!」
英語で延々とそのミニバスツアーとやらの説明をしている。
ウサギとぴゃんきっしゅは、観光にはあまり興味が無い。
どんな国に行っても、よく日本のツアーとかで有名なところには行ったことがない。マイナー路線のバックパッカーなのだ。
でも、デリーなんかには全然いたくない。
どうせ電車が取れないのであれば、そういう有名観光地でも見るか。元々ノープランだし。暇なんだからさ。一回くらいタージ・マハルなんつーものを見てもいいんじゃない?
ニューデリー駅に辿りついていれば、電車の切符が取れないなんて大嘘はすぐにわかっただろう。
んなわけあるか。
この神様いっぱいの国の聖地ヴァラナシでは、いつでもなんかの神様のお祭りをやっているのだ。
わかっていたのに、騙された。
なんかもういいや〜って感じになってしまったのだ。
話を聞いていると、ちょっと楽しそうだし。
それに、「楽しいことキャッチ電波」を持っているウサギの目が輝いてる。きっと楽しかろう。
「わかった。決めた。行くよ。もう一回、ツアーの行程の説明してよ」
インド人は我慢強い。特に儲け話には。
もう一回最初から丁寧に説明してくれ、英語がイマイチわからない私達の質問にもちゃんと言葉を変えて何度でも説明してくれる。
「わかったか?」
「うん。わかった」
「んじゃ、行って来い」
「え!?今から!?」
「ん?デリーになんか用事でもあるのか?」
「ない」
「んじゃ、行って来い。楽しんでこいよな」
というわけで、怒涛の観光が始まるわけですよ。
ツアー代は210ドル。+手数料10パーセント。
インドではあり得ないから。あり得ませんから。この値段。
金払った途端に不安に襲われたが、動き出した歯車はもう止まらない。学習能力ゼロなんですか、ぴゃんきっしゅよ。
この旅行会社についての後日談は 「騙し・ごまかしの手口」 にて。
まあ、行って来るゼ!
次テキスト 「怒涛の観光」 をお楽しみに〜。
そっちでは、もっと写真が載せられます。
モドル イッコモドル